Gyu場つなぎブログ【こんまり編応答】ソーシャルプロジェクトとは

牛島ゼミに本登録して頂いた皆さん,ありがとうございました。
直近の状況を鑑みて,選考方法も変更させてもらうことになりました。
私とも一対一で話すことになりますね。限られた時間ではありますが,4日を楽しみにしています。

さて,前回の場つなぎブログのテーマは「各プロジェクトの印象」でした。
さすがの発想力を持つこんまりさん,企業にたとえるっていうのはアイディアですね。

ソーシャルプロジェクトとは
もうご存じの方は多いとは思うのですが,現在,ゼミには3年生が選択必修として参加する3つのソーシャルプロジェクト(トガプロ,めぐるめ,unispo)と複数の有志型プロジェクトが活動しています。

「現実の社会にある問題を発見し,解決することを目的とした活動」がソーシャルプロジェクトの定義です。ポイントは,ただ課題解決やビジネスプランの提案を考えるだけではなくて,実際に自分たちで実験的な試みまで行うという点にあります。

プロジェクトを導入したのは9年ほど前のことでした。元々のきっかけは,第一に,研究の前提になる「自分で問題を発見する力」をもっと根底から強化する必要があると考えたこと,第二に,企業や自治体への提案プレゼンというのはよくあるけど,そこで終わってしまうことの限界と問題を感じていたことにありました。


(4年生が3年生にプロジェクトを紹介するガイダンス)

もちろん,課題を分析して提案を考えることには意味はあります。ただ,「学生らしいフレッシュなアイディアですね。ぜひ参考にさせていただきます」的なコメントをもらって終わってしまったらもったいないのではないか,ということですね。
言いっ放しでは,問題の分析が正しかったのか,提案内容を実現する際に何が障害になるのか,本当に想定通りの変化が起きるのかは検証できないことになります。プレゼン的な「面白いアイディア」を超えて,企業や社会の現実課題に寄り添ってもう少し先まで行けるかどうか,そこを試してみたいということでした。

短期間かつ小人数で企業や社会が直面する大きな問題を解決することは難しいかもしれません。しかし,小さな実験的な試みを行い,その結果まで含めて発信することで,どこかの誰かに「なるほど,そうか。面白いな。」と思ってもらえることは可能だと思います。

現場の実態を知り,自分たちが立てた問題について小さいことでも最後まで取り組んでみて何らかのアウトプットを出していく。そのためには,取り組むテーマについての先行研究,先行事例,理論も含めてかなりのインプットも必要になるはずです。大学内でのインプットと現実社会でのアウトプットの循環が生まれることが理想,そんな感じです。

ソーシャルプロジェクトの分かりにくさ
ソーシャルプロジェクトの活動は,現実の問題を扱うという部分で関心を持ってもらえることもある半面,なかなか2年生にイメージをうまく伝えることができないという難しさもあります。

その理由は,「ソーシャルプロジェクトには正解がないため王道も存在しません。何をすれば良いか考えて試行錯誤すること自体がソーシャルプロジェクト」という,こんまりの指摘通りだと思います。分かってますね(笑)

もう一つ付け加えるとすれば,ソーシャルプロジェクト,とくに選択必修型のテーマ設定を「いまの自分と一番遠いところに視座を持つ」というところに置いていることにもあるのだろうと思います。

「いまの自分」とは,東京で生活する消費者としての大学生ですね。
一番遠い視座というのは,たとえば,東京とは対極的な中山間地域の限界集落(トガプロ),食料を購入して消費する都会の生活者が知らない食の生産と流通の世界(めぐるめ),高齢者や障害者,子育て中の親など,若い学生とは異なった社会的環境にある人々にとってのまちのあり方(unispo)といった感じです。


(有志型プロジェクトが開催したトークイベント「いきかたろーぐ」)

現在の日本を自分とは異なった視座から眺めると,何が問題として浮き上がってくるか,それがプロジェクトの出発点になります。ただ,これまで馴染みのない地域・産業・人々に触れようとする分,自分とのつながりが感じられない,イメージがつかめないということはあるだろうと思います。
でも,前向きに取り組んでもらうことができれば,きっとそれまで気がつかなかった新しい世界が開けるはずです。消費者としてお金を払って購入する楽しさ,面白さとは違った,何かを創る側の楽しさ,面白さを感じてもらえれば幸いです。

実践あるのみという誤解
プロジェクトの具体的な企画はほとんどの部分学生に委ねられていますので,その年のメンバーの興味関心に導かれて思わぬ方向に進んでいくこともあります。できるだけ自由度は高く設定したいと思っていますが,同時に,あくまで大学のゼミ,商学部のゼミであることを強みとすることに拘りたい,というのが私の考えです。


(シッティングバレーボールに挑戦するunispoメンバー。こういう体験と商学部をどうつなげるのか手腕が問われます。)

しばしば誤解されるのですが,ソーシャルプロジェクトは,決して「実践あるのみ」という姿勢ではなく,上述の通り,現場と大学を行き来しながら,インプットとアウトプットを繰り返し,他の学部ではできないような商学部の専門性を活かしたアプローチが何かないか考えるということを重視しています。
プロジェクトでの活動を経験しながら,自分が大学の商学部で何を学ぶのかを考え続けて欲しい。そして実際に大学での学びも深めて欲しい,それが願いです。