不思議な単細胞生物、アメーバ
こんにちは。元22期、現23期のまいです。
皆さんは「アメーバ」と聞いて何をイメージしますか。
「アメーバ」という言葉には、「定まった形のない」という意味がありますが、その名が示す通り、生涯にわたって分裂を繰り返し、みるみると形を変えていきます。
一生のうちに二度と同じ形を取らない、おもしろい生き物です。
3年間の牛ゼミ生活を振り返ることになったとき、ふと、小学校で学んだこの小さくて魔訶不思議な生物を思い出し、そういえばアメーバのようにウニャウニャと柔らかくなったり、自由自在に形を変えたりしてゼミ生活を送ってこれたとしたら良いなと感じました。
小さな独裁者
約3年前、かねてからの希望であった牛ゼミで学び始めた頃、私はゼミで研究したいテーマだけは大事に考えていましたが、およそ人間性としては他人との共同作業をするにあたって欠陥しかありませんでした。
肥大化したプライドとこじらせたコンプレックスの塊を振りかざし、それは酷い態度で皆にさんざんな迷惑をかけていました。
グループ活動を通して、根っこにあった他人への不信感、自分に対する全能感、強烈な「自分は正しい」という思い上がりが発露したからです。
人一倍プライドとこだわりが強く、おそらく自分の意見を押し通すことに正義感まで抱いていた私は当然グループ活動の多い牛ゼミの危険因子となっていたはずです。
日々、不健全な欠乏感を前に何かを捕まえてやろうと、他人を疎かにして闇雲にゼミ活動に没頭した結果、恐ろしい緊張感を生み出し、誰にも止められない暴走状態を引き起こしました。
その傍若無人ぶりは「小さな独裁者」と形容できるほどだったと反省しています。
この場を借りて、いまは社会人1年目の元同期、先輩方、そして先生にお詫びします。
そして、向き合うべき課題を指摘し気づかせてくれたゼミ員に感謝の気持ちでいっぱいです。
Que será, será(ケ・セラ・セラ)の国・スペイン
3年生の前半半年間でゼミ内を引っ掻き回したあと、私は無責任にも残された元同期にその後処理を任せ、スペイン・バルセロナへの交換留学に飛び立ちました。
留学中も頭の片隅にはゼミでの振る舞いをめぐる苦い記憶が留まっていました。
そんな状態で南欧のぎらぎらと輝く太陽とビビッドな空気、明るく陽気な国民性に触れたことで、自分の中で何かが変わったかもしれないと実感していました。
自分を悩ませ、周囲を困らせていた、ドロドロとした何か良くないものが少しだけ浄化されたような気分です。
同時に、自分の奥底に潜んでいたC調と遊び心を刺激されたような感覚もありました。
これが、エンタメを介して皆が居場所を感じられる社会をつくるユニタメプロジェクトの重要なファクター、“遊び”や“楽しさ”の追求、にも繋がっていくのだと気づき、見事な伏線回収だったと、3年間を振り返るいま、密かに思いました。
ラテンの風に吹かれた猫?
このサブタイトルは帰国後に同期になったある23期生が私を想像してつけてくれたキャッチコピーです。ユーモラスでとても気に入っているのでこちらに引用することにしました。
帰国後、元同期にまず指摘されたことは「明るくなったね、なんか陽気になったね」でした。
自分自身も、メンバーが入れ替わった牛ゼミに心を一新して舞い戻ってきたとき、ムダを楽しみ、自然と仲間に興味を抱くことができる心境の変化を自覚しました。
そして、個人の感情を無下に扱わないこと、ただし、他人を気遣うエゴを押し付けないこと、当たり前のことですがその大切さを痛感しながらゼミ活動を再開できている、と確かな感触を得ました。
何よりも、仲間の素敵な一面に目が向くようになったことがとても嬉しいです。
このゼミでは、能力の物差しで測れない、人としての良さを発見できる機会に溢れています。
そして、ゼミ活動の幅広さと活動密度の大きさから、人間を多面的に理解し、評価しようとする意識が醸成されていると感じます。
自分自身もそんな皆の視点に何度も救われてきました。
普段から誰かを頼ったり相談したりするようになった姿勢もゼミ内における自らの心理的安全性を高め、社交性開放(≒明るさ)のブーストを上げてくれるのかなと思います。
人に助けを求めることは、他人への信頼度を高め、自らに対する幻想的な万能感を少しずつ壊していくきっかけにもなっています。
自分の「わからなさ」や「弱さ」を共有し、一緒に考えてくれるメンバーがいてくれたからこそ、ゼミは自分にとって成長の場となっていると断言できます。
ゼミ活動を再開したとき、思い込みで他人を判断する傾向が強かった以前を振り返り、自分が想像する他人像に余白を残してコミュニケーションをとることも意識するようになりました。
自分の価値基準や勝手な想像で他人をジャッジ、排除していた人間が、いまではユニタメプロジェクトでインクルーシブ社会の実現を目指しているなんて、少し複雑ですよね。
最後に、他人と協働するときに必ず直面する課題について、留学前の反省を活かし、三田論執筆やプロジェクト活動を通して心に留めていたことがあります。
それは、人の行動を変化させたいと思ったときには、他人を変えようとするのではなく、自らの言動を相手に合わせて変化させることで、相手の内から湧き出る変化を促す努力をするということです。他人を変えたいという意志自体、尊大で不可能に近いですが、「自分が変わる」その心構えだけは大切にして牛ゼミの諸活動に臨んできました。
それでも、他人に対する怒りや不満が湧いてきたときには、「自分が正しい」と思い込んでいるからそんな負の感情に囚われるのだと考え直す訓練の機会として捉えるようになりました。
続・不思議な単細胞生物、アメーバ
最初に説明した通りアメーバはそれ自体が変形自在であるとともに、細胞の一部が柔らかくなって流れ出し、足の役割を果たす「仮足(かそく)」を利用して移動の方向も自由に変えることができます。また、何度でも分裂できるため、老化とは無縁で寿命は無限にあります。
そのため、私たちの生活のいたるところに生息するアメーバは、分裂を繰り返しながら何億年もの時代を生き続けてきた生き物なのです。
自分を構成するものは全く変わらないのに、フニャフニャと微妙に姿形を変えて、どんな場所でもどんな時代にも適応して生き続けられるなんて、神秘的ですよね。
その単純かつ柔軟な生態に興味が湧いてきませんか。
牛ゼミ生活3年弱で、自分のこだわりや生き方の枠組みを維持しつつ、他人と関わる際には、無理ない範囲でそこからぬるっと遊離して周囲の環境に溶け込む感覚を少しずつ獲得してきました(まだまだ精進中ですが)。
どんな方面にも自由自在に移動し、無限に新陳代謝を繰り返すアメーバにあやかって、永遠に日々の変化と成長を愉しめるような人生を送りたいです。
振り返りといいつつ、理想と期待を込めたひとりごとのようになってしまいました。
こんな私を寛容に迎え入れ、良い方向へと導いてくださる先生、一緒に学びの道を歩んでくれるゼミ員の皆さん、本当にありがとうございます。最後までよろしくお願いします。
そして、牛ゼミを志望してくれている後輩たちへ、これから皆さんにお会いできることを楽しみにしています。
#自由自在
#変体
#自発性
参考:NHK for schoolミクロワールド「変形自在 アメーバの不思議」https://www2.nhk.or.jp/school/watch/bangumi/?das_id=D0005100085_00000