【2020年オンライン夏合宿インタビュー Vol.5】四万十町役場 政策監(兼)企画課まちづくり推進室長 大元学さん編

今回のインタビューでは、四万十町役場の大元学さんにお話を伺いました。大元さんは現在四万十町役場において、政策監として廃校の校舎活用や住宅政策等に取り組んでおられます。町で生まれ育ち、28年間役場で勤められる大元さんに、四万十町の現状とその魅力をお聞きしました!                                                    

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↑大元さんと大元さんが勤めていらっしゃる四万十町役場本庁舎                   (画像:大元さんからのご提供および四万十町役場HP)

移住には限界がある

ー四万十町は平成28年に転入超過を実現されたように、町として移住政策に力をいれられていたように感じます。転出・転入に対する町の政策としてはどのようなことがあったのでしょうか。

大元さん:今(役場の)移住担当が話をしているのは、やはり移住には限界があるかなと。もちろん町に来ていただきたいし、それで町は変わっていくと思うんですけど、一方で、転出も多いわけですよね。移住で来た方が必ず定住して残ってくれるといいんですが、やはり何らかの理由でいつの間にか出ていかれたりとか、また町内に元々いる方もいろんな理由で出ていかれたりするんです。なので、今は「移住でどんどん来てください」というよりも、町にいる人に、いかに残ってもらうかというところに考え方をシフトしているという感じです。

特に3月とかって、やはり当たり前ですけど転出の方が超過するんですよね。その分転入があるかというと全然入ってこないんです。なので3月の転出の状況から、どんな理由で出てるんだろうというところを分析しています。

ーその理由は既に掴めているのでしょうか?

大元さん:やはり就職・進学ですよね。高校生だと家族で出ていかれる方もいらっしゃいますね。今、高校の存続も大問題でして。町内に高校が2校あるんですよ。中学は町内に5校あって、卒業生は100人ちょっとぐらいしかいないんですよ。この100人が2つの高校に全員進学してくれれば良いんですけど、実際には2割くらいですね。あとはもう高知市内とかに行っちゃうんです。高速とかが整備されて便利になった分、出て行きやすくなったんですよね。

ー転出に関する点での課題は、やはり仕事先や学校の問題が大きいんですか?

大元さん:学校の問題は大きいですね。なので、四万十町は、町で公設塾を作るなど、地元高校の魅力づくり支援として年間5,000万円くらい出しています。そうして、何とか地元の高校へ進んで頂くっていうのもやっています。でもなかなか成果は出ないですね。

ー四万十町の若者は町の現状に対してどのような意見を持っているかということについて、長年町役場に勤めていらっしゃる大元さんとして、何か思われることはございますか?

大元さん:役場の職員の一個人の考えとしては、両極端かなと思いますね。本当に町のことを真剣に考えなきゃいけないなと思っていろいろやっていて、町に残ってくれている方もい れば、あんまり考えていない方もいらっしゃるなと。昔の話になりますけど、自分らが若いときは青年団というものがあったんですね。そこでお祭りをやったりとか、自分らでいろい ろ企画したりとかっていう団体があって集まっていたんですけど、そういうのは最近なくな ってきていますね。でも、そういう中で考えてくれる若い方はいらっしゃいます。

町に人を呼び込むために

ー四万十町に人を呼び込むにあたって観光面と移住面でどのような課題があるのか教えて いただきたいです。

大元さん:観光でいうと、先ほどお話しした通り四万十川というブランドがあって、これをいかに上手く宣伝するかだと思うんですよね。PRがちょっと下手だったかなというのはあって、広報戦略を町の事業としてやっていこうと考えてます。イメージとかブランドとかを、いろんな課のいろんな部署がバラバラにやっていっても効果がないので、そういったところをきちっと統一してやっていきましょうと。そういったところを統一していけば、観光面と言えば四万十川がありますので。後者の移住面に関して言えば、関心を持っている方が移住してくる、あるいは移住してきた人が定住してくれる、この点については挙げたらきりがないくらい、課題だらけだと思います。

ー観光で来た方が定住するというのが町として最終的な目標なのでしょうか?

大元さん:観光に来ていただいた方も、移住してもらって定住していただくというのが1つです。ですが、それだと元々住んでいる方がいなくなってしまうので。その点で1つ課題を挙げるとすると、田舎なので受け入れるときの抵抗感があるんですね。観光で来てくれるくらいだったら全然ありがたいことですが、その方がいざ入ってきて住むとなると小さい集落ほど抵抗感があるかなと思います。「お試し体験施設*」にちょっと1か月くらい、試しで入ってもらって雰囲気に慣れてもらって、受け入れてもらう方にも慣れてもらって、ワンクッションを挟んで、じゃあ本気で移住するなら来てくださいねという考えを持っています。

~お試し体験施設*~

将来的に四万十町へ移住を考えている方、入居期間中に周辺の地域住民と交流が持てる方が1ヵ月1万円で、四万十町に”お試し”滞在できる物件です。短中期的に”移住”を体験することで、四万十町の魅力を直接感じながら、新しい暮らしに伴う不安を解消するのにオススメ。(出典:四万十町役場HP

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↑四万十町十和広井地区にある『お試し体験住宅』の物件の一つ。               (画像:四万十町移住定住ポータルサイト)

ーずっと地元四万十町でお仕事をされている大元さんにとって、四万十町の魅力っていうのはどういうもので、それを都会の人にどう広報して伝えていきたいとお考えですか?

大元さん:そうですね。今そこを考えているところで、去年から力を入れ始めているところです。こんな話をするのもあれなんですが、民間の方だと広報するのが当たり前だと思うんです。自分たちの商品を売るとか。そういったところが役場の人間は少し欠けている気がするんです。どうしても、お金にならない仕事をやってるというイメージが元々あって、宣伝すること自体にはあまり重きを置いていないので、広報は今からやっぱり大事かなという思いがあります。これをいかにうまく仕掛けるのかっていうところは、自分たちだけではちょっと難しいので、その辺を周りから知恵をいただいたりしながら、実現していきたいなと思います。

ー実際に四万十川ブランド以外に、観光客が行ってこそわかる“四万十町の魅力”はありますか?

大元さん:よく言っていただくのは「食」ですかね。「美味しい」、「種類が豊富」、「魅力がある」と言っていただけます。

ー具体的にどんな食材が人気なんですか?

大元さん:お米とかかな。日本一の賞を獲ったお米もありますし、あと豚肉も有名です。また、四万十川に絡んだら鮎とかうなぎとか。結構食材はあると思うんですよ。四万十町は広いので、旧十和地域だとお茶や栗が有名だったり、地区によって異なる多くの名産があります。

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四万十町の特産の仁井田米、窪川豚(画像:四万十町役場HP

ターゲットは大学生

ー大元さんが現在町役場において行われている「廃校を宿泊施設として利用する」取り組みは、何年ぐらい前から行われているのでしょうか?

大元さん:形を変えながらではありますが、廃校になった平成23年から取り組んでいますね。今の形になったのは昨年からです。ぜひここで宣伝したいのですが、来年の7月にオープン予定なんですね。この施設が大学生の受け入れをメインにしたい施設なんですよ。というのは町内の宿泊施設のお客さんを奪うのではなく、新しいターゲットとして県外の大学生の合宿などに来てもらいたいと思っています。

ー来年の合宿はオフラインでリベンジ合宿ができるということですね!

大元さん:ぜひ来てください!(笑)

ー観光や移住の政策において、これまでは大学生を明確にターゲットにされていなかったと思うのですが、他の世代にターゲットを置いていた理由はなんですか?あるいは、そこに今まで取り組んでこなかった理由はありますか?

大元さん:あまり考えてこなかったですね。今回あえて大学生にターゲットを当てたという 感じで、今まではもちろん大学生も含めて全員に「来てくださいね」っていうことではあったんです。大学生を除外していたわけでもなくて。そこら辺の目的を明確にしないと、ブレブレでやってもなかなか人を集めにくいし、来てもらいにくいじゃないですか。だから、逆 に今回ターゲットを絞ったという考え方がしっくりくるかなと思います。

魅力が詰まった”お試し滞在施設”

ー今後、大学生のような若い世代をターゲットに施策をされていくという話だと思うのですが、先ほど、集落の方だったり町の方が他の人を受け入れることに対する抵抗感がある というお話があったと思います。その辺を解消する取り組みであったり宿泊施設に対する 教育・講座みたいなものは、現在受け入れ施設向けなどに行っていらっしゃることはあったりしますか? 

大元さん:受け入れ施設に対してっていうのはないですけど、先ほど話ししたようにお試し滞在施設といった形でワンクッション置いて、来る人と受け入れる人どちらにも慣れていただくという施設を作って、そこでちょっとだけ体験してねというのはやっています。お試し滞在施設は、もう予約が満杯なんです。また今度予算を出して、2棟程増やす予定にしています。

ー具体的に何人ぐらいを受け入れる予定なんですか?

大元さん:一軒家をイメージしていまして、そこに家族で来られる方もいらっしゃれば、単身で来られる方もいらっしゃると思います。1か月みたいな短い単位で来られる方とか、期間も様々だとは思います。

ー短い期間であっても、滞在される方が四万十町の方と交流する機会や、交流を促す仕掛け作りに関して、現在企画されていらっしゃることはありますか?

大元さん:そうですね。お試し滞在施設で言うと、それほどその地域に積極的に中に入って参加してねということはあまり無いのかなという気がしますけれど、そういう施設の中で、 四万十町にも「クラインガルテン四万十」(市民農園)という、農園付きで貸し出しをしているところがあります。日帰りだったり長期的にも住むことができて、農地を付けていくらかでお貸ししているんですけども、その施設では集落との交流もやっています。集落自体が、そこにお試し滞在施設を建てたことによってそういう意識を持って活動してくれています。

ーそういった点であまり都会ではできない体験ができると若い世代にアピールして、四万十町に交流や関係を持ってもらうような人を増やしていけたらいいなというイメージですか?

大元さん:そのようになればいいなと思っています。実は、学校(廃校)の近くに四万十川が流れるダム湖があって、そこで滞在者にどんな体験をしていただこうかという体験メニュー を今開発してるところです。是非アイデアをいただけたらなと思います。

実際四万十町に住むってどんな感じ?

ー大元さんは、町長からの特命事項として定住を目指した住宅建設に取り組まれていると 思うのですが、先ほどの「お試し滞在」とは全く違う仕組みで一から新しい住居を作っているのですか? 

大元さん:すべて新しいものではなくて、空き家を改修して住宅として提供することも考えています。また、建てることだけが住宅の政策ではなくて、例えば家賃を支援するなどいろんなやり方があるので、そこを今模索しているところです。

ーなるほど。本当に素朴な疑問なのですが、もし私が大学を卒業して四万十町に別荘を買って住むとしたら、家賃など価格の面で手が届くのでしょうか?

大元さん:住宅もね、今の住宅を改修して長期間お貸しするものと、あと町が所有者の方から借りて改修をして、12年間お貸しますよという制度もあるんです。2年単位で延長しなが ら最大12年で、そのあと最終的には家主さんと話ができたら買うこともできる。もうほんとびっくりするぐらい新しい家になりますからね、ほとんど負担はいらないですね。家主さんが自分で改修して直接貸すというのもあるので、もちろん家主さんが負担しなければならないですけど、今それにものすごく補助金を出しているんです。家主さんも「ただ放っておいて固定資産税がかかるだけだったら、少し改修して貸そうか」という方がいますので、そういった方の家をお借りするとなれば、ほんとに数万円でいけると思います。改修するのも、家を建てるのも今すごく補助金を出していますので、是非建てていただきたいですね。

ー四万十町での生活をいろいろと想像していたら楽しくなってきました。本日は様々なお話をいただき、ありがとうございました! 

図7