【牛の放牧合宿・対談SP・第5弾】 ~鈴木裕士さん・滝田一馬さん編~

現在金谷の移住支援をしている金谷生まれ金谷育ちの生粋の金谷っ子・鈴木裕士さんと、実際に金谷へと移住をした滝田一馬さんにお話を伺いました。

 

大学卒業後、銀行・旅行会社勤務を経てから30歳で金谷に戻り、家業の「富洋観光開発」で現場に従事した鈴木さん。

そんな鈴木さんは2000年、同社社長に就任し、複合観光施設「The Fish」をオープンしました。

 

そして生まれは東京都葛飾区の滝田さん。

東京農業大学を卒業後、都内IT企業へ就職し、千葉県での有機農業の研修過程を経て2015年春、富津市金谷に移住しました。

そんな滝田さんは現在、金谷にあるシェアハウスの運営や、金谷へのお試し移住プログラムの代表責任者など金谷に根ざした活動をされています。

 

今回は、私たちがゼミ活動で訪れることの多い利賀村と金谷を比較しつつ、なぜ金谷は近年移住者数が増えているのかの真相に迫ります。そして、お二人が持つ、金谷への移住の展望をお聞きしました。

 

滝田さんの移住経験を聞く

ー一度、IT企業に就職されていますが、どうして金谷に移住されたのですか?

(滝田)自分は、大学時代に農業サークルに入っていて、その農家さんがいる金谷に週末よく来ていたんだけど、純粋に楽しかったんだよね。人っていうよりも、とにかく夕日いいなあ!とか金谷の自然に惹かれて、自分が暮らしたいと思ったんだ。あとは、この魅力を他の人にも伝えたいと思って、移住を決めたよ。東京の近くにあることも、移住のハードルを下げたと思う。

 

 

金谷への移住のハードルは低い

ー金谷には、ここ2年間で約40人も移住しているという記事を見ました。私たちは、富山県の利賀村で活動していて、5~10年の間に約6人の移住者がいて、そのうち半数の方は、富山市内から、もう半数は、東京からなんです。その方たちは、利賀の「人」にひかれて、移住することが多いようなんですが、金谷に移住される方は、何を魅力に感じていると思われますか?

(滝田)そうだな、大きくは二つあると思っていて、一つは金谷の地域性として、来るもの拒まず去る者追わずの精神があるから。もう一つは、金谷という町がコンパクトで都心からのアクセスが良いという地理的条件に恵まれていることもあると思う。でもやっぱり、移住までいくには、今も苦労しているんだ。移住も入れ代わり立ち代わりで。それでも、「都心に近い」っていう利点から、平日は東京で仕事をして、週末は金谷に来る、みたいな人も結構多いんだよ。例えば、週末に金谷に来て農業用のロボットを作っている人とかもいるんだ。そういう週末移住をしている人たちが金谷には多くて、それが関係人口を増やすことにつながっていると思う。関係人口を増やすことが、移住してくれる人を増やすことにもつながっているんじゃないかな。

これからの金谷への移住について

ーなるほど。利賀村とは、立地条件の点で、大きな差がありそうですね。先ほど、移住までいくのに、苦労しているとのことでしたが、これから移住促進するにあたってどのようなことが課題だと思われますか?また、移住を促進することによって、どのような将来像を描いていらっしゃいますか?

(滝田)なかなか観光協会や地元の商工会議所などとの連携がうまくとれないことも課題なんだけど、一番の課題は、金谷に来てくれた人たちが、そこに住みたいと思うようなきっかけ作りができていないことだと思う。

(鈴木)移住支援は、呼び込むことだけがゴールじゃないからね。来た人が、その先に気づいてくれるような環境をつくることが難しいんだ。

(鈴木)こちら側から外部の人に金谷の魅力を伝えて、気づいてもらう努力もしているけど、逆に外部の人から金谷の魅力を教えてもらうこともあるんだ。金谷は鋸山という山の石が有名だけど、その山に良質な石があるってことを教えてくれたのも県外の学者の方なんだ。しかも鋸山は、日本での知名度はそれなりだけど、海外の旅行サイトでは「ディープな日本の観光地」としてとても人気があるんだよ。そういった県外の方や外国人観光客からの新たな視点から金谷の魅力を再認識できることもあるんだ。

(滝田)そうやって、町の外からの新しい風と古くから培ってきた金谷の良さを組み合わせて、金谷に来てくれるきっかけを作ることと、この先住みたいと思ってくれるような支援ができる環境を整えられることが、理想の将来像かな。

 

 

金谷は、都心に近いという利点があり、近年移住者が増えている。しかし、金谷を訪問した人が、「金谷に住みたい」「金谷のために何かしたい」と思ってくれるような環境づくりには、まだ改善の余地が十分にある。そういった環境づくりのためには、今ある金谷の良さを守りつつ、外からの新しい視点を柔軟に受け入れることが必要なようだ。