【15期振り返り記事「できないことに自覚的でいること」-星野編-】

こんにちは、4年のももよです。

ゼミは大学生活の半分にあたる2年間を大きく左右するものですね。私は法学部政治学科の所属なので、他学部のゼミを選ぶのはとても勇気のいる選択でした。卒業間近に大学生活を振り返り、牛島ゼミを選んだことは正しかったと感じています。

 

私は元々、ECFAプロジェクトに入りたくて牛島ゼミを選びました。きっかけは、2年生の時に東日本大震災の被災地である陸前高田市を訪れたことです。そこで、近所づきあいのある地域ではお互いの顔が分かるから、避難所で「○○さんがいないね」と気付いたらすぐにその人の家まで行き、生き埋めになっていた人の救助を行うことができた、という旨のお話を聞きました。地域コミュニティ(社会的紐帯)と減災に関連があることは、考えてみれば当たり前なのですが当時の私にはとても大きな学びでした。そこから、地域デザインへの関心が高まりました。

牛島先生に相談したところ「ECFAプロジェクトはマイノリティの視点に立って東京という“まち”を考える。あなたの関心とリンクするものがあるかもしれない」と言っていただき、牛島ゼミを受けようと決めました。

 

ECFAプロジェクトで活動を始めてから、日本では16~17人にひとりの割合で「障害者」と呼ばれる人がいることを知りました。しかし、町を歩いていてそこまで高頻度に障害者を見かけることはありません。それは、物理的・心理的なバリアが街にはまだ多く残っているからに他なりません。同じ東京に住んでいるにも関わらず、障害をもつ人と自分自身の日常があまりにも分断されていることに初めて気づきました。そして、その分断は義務教育の段階から始まり、仕事、レジャー・娯楽と多岐にわたっていると感じました。

 

「みんなが楽しいと感じられるイベントを開きたい」そんな思いから、視覚障害や肢体不自由、発達障害を持つ人をお招きしたホームパーティーを3年次に開きました。2年間の活動の中で、このイベントが最もインクルーシブだったな、と思っています。イベント企画段階から車椅子ユーザーに参画して頂いたことで、当事者のニーズに沿った施策を打ち出せたためです。個別の障害に応じてどんな工夫が必要か洗い出し、2人1組のペアを組むことで配慮を提供できるような工夫を考えました。

そして興味深いことに、この工夫のおかげで、障害を持つ人ばかりでなく健常の参加者もより楽しむことができた、という声があがりました。実際に私自身も、内向的な面があり普段は自由に動き回る形式のイベントが苦手です。すでに会話が盛り上がっている場にうまく入り込むことが難しく、どこにいればいいのか分からなくなってしまいます。しかし、このホームパーティーでは、ペアを組むことでその不安感を覚えることはありませんでした。

 

4年次には、障害があるひともない人もたのしめるスポーツイベントを続けて開催しました。これは、障害者と健常者の住む世界が隔絶されていて、お互いがお互いを知らない状況に問題意識をもったためです。スポーツを通じて、障害があろうとなかろうと一緒にひとつのこと取り組み、近い距離で交ざり合える機会をつくりたいと考えました。

イベントに参加してくれた健常の友人は「障害を持つ人と関わるのは初めてで、どういう風に接していいか、いつどのような気遣いをすればいいかわからず戸惑った」と素直な感想を伝えてくれました。同時に、「ECFAのメンバーはみんな本当に“普通”に接していて楽しそうで、私もああいう関係を築けるようになりたい」とも言っていました。

 

ECFAの活動はどうしても個々のイベント開催がメインになりがちで、トータルの受益者を明確にし、一本の軸に沿って活動できなかったことが反省点です(一発屋と言われたこともありました)。目の前のことにいっぱいいっぱいで、自分の代でその状態を脱せられなかったのが悔やまれます。

この原因として、「誰に対してどんな価値を届けたいのか」そして「それを私たちがやる意義は何か」を考えすぎて足踏みしてしまい、思い切って協働先を決めなかったことがあると思います。活動をゼロベースから考えた時、今ある繋がりの中から協働先を明確化できていれば、受益者とそのニーズを明確化し、ひとつの軸に沿った活動ができていたかもしれません。

また、ECFAで関わる方々とは、1年目でまず相手の表層を知る、2年目でより関係を深めるというスピード感で関係を築いてきました。しかし、1年目でより深い関係を築ければもっと進んだ活動ができただろうなと思います(ただ、3年生がディベートや三田論で忙しく、十分にプロジェクトの時間をとれないという構造的な問題もありますが…)。

ECFAで関わっている方々は、障害に対するコンプレックスをある程度克服していたり、そもそもコンプレックスを持っていなかったり、自分をさらけだすことを苦に思わない人が多いです。それは、家族や周囲との関係性などから自己肯定できているからだと思います。

でも、障害を持ちながらも社会と関わりを持てている人が全てではないと思います。私たちから見えないところでは、自宅と作業所だけを往復をするような、限られたコミュニティだけで閉鎖的に暮らしている人がたくさんいると思います。

ECFAで関われるのは、最も見えやすい、社会参加できているごく一部の層にすぎない。自分達が見ているのは、表層的な部分でしかないと自覚的でいることが大事だと身を持って感じました。だからといって何もできないわけではないから、限られた中で自分にできる最善を見つける、そのギャップの苦々しさを感じた2年間でした。

 

ゼミで感じた多くの問題意識は、ゼミの2年間だけで終わらせたくありません。これからも仕事やプライベートの時間を通じて、ライフワークとして取り組みたいと思っています。自分の将来を決定づける材料を与えてくれた牛島ゼミに感謝です。本当にありがとうございました!