神津牧場訪問記

みなさん、こんにちは。
今期から、新しいメンバーとなりました。きょすけです!

初めてのブログ担当ですが、なんと本日の物語、豚ちゃんは登場しません。

本日の主人公は、3頭の牛たちです。牛たちが、東京都八王子から群馬県へお引越しします。

名付けて、「牛の大移動プロジェクト」。

目的は、八王子の磯沼ミルクファーム(以下、磯沼ファーム)の牛たちを、群馬県の神津牧場で数か月の間放牧させることです。今回は磯沼ファームの磯沼さんのご厚意により、お仕事に同行させていただくことになりました。

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当日は、朝8:00 磯沼ファーム集合。

磯沼さんにご挨拶をし、神津牧場に向け出発しました。到着時には丁度、牛たちがトラックに乗り込んでいました。

牛たちとどんな旅になるのか、とても楽しみでした!

東京都八王子から群馬県甘楽郡下仁田町まで、約3時間半の長い道のりです。私たちは牛が乗るトラックとは別に、磯沼さんに運転いただき自家用車で向かいました。

車内では、磯沼さんから様々なお話を伺うことができました。

まずお聞きしたことは、牛の放牧理由。牛は人間と同じく、放牧して運動すると健康になります。

「肉量が多い牛を育てるだけなら、放牧しない方がいい。なぜかというと、筋肉がついてしまい脂肪が少なくなるから。だけど、放牧させて健康になってもらうことで、油脂が体にいいものになって肉自体の甘味が増すんだよ。」

と、磯沼さん。より良質で美味しいお肉をつくるためにも、牛たちが本来のように駆け回って育っていくのがいいのだと教わりました。

磯沼ファームは、アニマルウェルフェアの考えのもと、牛と人の幸せな牧場を目指しています。牛が牛らしく生きてほしいと、手間をかけて育てる。磯沼ファームでは、そうして育てた牛から作る乳製品にもこだわりを持っているようでした。

「うちの商品は、少量で価値を生み出す商品。もし、大量に作りたいと製造販売に注力してしまうと、そちらに人員を割かなくてはいけなくなる。そうすると、本来の酪農業に集中できなくて本末転倒。少量でもいいから、うちの特徴を生かして付加価値をつけたい」

ところが、そうして作った商品は少なからず高額になってしまいます。

どういった方が購入されるのかお聞きすると、

「原材料がいいから、その価値を認めてくれる人が買ってくれるよ。安心して買ってもらえるし、待っているお客さんもいる。その人たちの笑顔が何よりの利益。」

「おいしいものを食べることによって、次の命をつなげていく。(酪農家の)仕事を頑張る糧にしている」

とおっしゃっていました。

さらに、

「食べるは日常的なこと。ファストフードもいいけど、少しお金をかけてでも、製造側がどんな想いで育て、作っているのかを知るべきだと思う。その上で、自分で判断してほしい」

と、食の背景を知ってほしいという切実な願いもありました。

ファストフードを否定するつもりはありませんが、そのアンチテーゼのスローフードを応援する人も必要です。せっかく体に入るモノなので、無機質なものではなく、五感で感じられる食生活を過ごすことができれば、きっと人生はより豊かになっていく。自分が食べているものが、どのような想いで作られているのか、知ることも大切なのだと考えました。

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話が弾む中、サービスエリアに到着しました。牛たちがストレスないかチェックするためにも休憩を取りました。ちょうど荷台から顔をのぞかせている牛をパシャリ。

▼荷台から顔を出しています

狭い車内だけど、神津牧場までもうひと踏ん張り。しっかりと休憩して、目的地に向かいました。

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山中を駆け抜け、ついに山頂へ。神津牧場へ到着しました。

牧場に入り、さらに進んで行きます。放牧場はどんなところなのか、わくわくしました。

裏側へ周り、放牧場に到着。見渡す限りの緑で、これぞ大自然!という景色でした。

牛舎付近に車を止め、牛を牛舎に入れる作業に入りました。

扉を開けると、3頭のお尻がひょっこり。全く出ようとしません。縄を引っ張り、ようやく一頭が出てきたと思いきや、直前で危なくつまずきました。

やっとの思いで3頭とも無事牛舎の中へ。その後、放牧地に向け走っていきました。

山頂は空気も良く、牛たちも元気な様子でした。僕が感じたように、牛たちも気持ちよかったのでしょう。長旅を終え、颯爽と駆け回る様子を見て、とても嬉しく思いました。

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ひと段落してランチを取りながら神津牧場のオーナーの方からお話を伺いました。

神津牧場は、日本最古の洋式牧場だそうです。創始者は、神津邦太郎という当時は22歳の若者でした。ちょうど「富国強兵・殖産興業」が叫ばれた明治に、日本人の食生活に乳製品を普及させようと、神津牧場を開設したそうです。

家畜福祉やサスティナブル、酪農協育ファームなど、未来型農業のあるべき姿になっています。

驚いたことに、神津邦太郎は、慶應義塾で福沢諭吉に教わっていたとのことでした。意外な繋がりを感じます。

神津牧場は、総面積387haに200頭のジャージー牛を育成しています。10年ほど前に、群馬県からの委託事業を終了し、現在は公共育成牧場として各地の牛を受け入れています。

放牧は通常、牛一頭に1haが理想とされているそうです。しかし神津牧場はそれ以上に広く、よりのびのびと育つ環境だといえます。

現在の牧場オーナーに、なぜオーナーを務めることになったのかをお聞きすると、

「当時、光化学スモッグかひどく、社会問題になっていた。東京に住めないと思い、地方に移住した」

とおっしゃっていました。

山の頂上で、とっても空気が良く、動物にとっても人にとっても住みやすい環境なのだと思いました。

▼ジャージー牛のカレー

▼運よく、牛の大行列を見ることができました。

食後のソフトクリームも忘れず食べました。ホルスタインと比べ脂肪分が高く、より濃厚な味わいでした。

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食事を済ませ、神津牧場を出発しました。

帰りの車内では、磯沼さんからさらに深いお話を伺うことができました。

磯沼ファームは、都市酪農です。山の中での経営がほとんどの地方農業とは、少し実情が違います。

もともと市街化調整区域で、農業用に使用されました。昔からある土地を全面的に使う方針で、購入した土地はありません。

頭数を増やしたいときは設備投資をせず、裏に牧草を増やすなど、同じ土地を工夫して子牛を受け入れたそうです。

最初は経営が難しかったそうですが、試行錯誤を重ね、今の磯沼ファームがあるとのことでした。

伝染病も、酪農家を悩ませる一つの種です。訪れた神津牧場には豚がいなく、理由は伝染病が広がってしまう可能性があるからでした。

磯沼ファームにも同じ課題はありましたが、都市の中で近接された牧場はないため、外界からは侵入しにくいとのことでした。豚と牛を共通で飼うことも構わないとおっしゃっていました。

また、家畜との関係で気を付けなければいけないこともお聞きしました。

ペットは人に癒しを与えますが、家畜は働くことがメインです。しかし、そのために丁寧に育てます。一頭の投資額が大きいこともありますが、それほど愛情もわくといいます。

「豚は噛みつくんだよ。長靴をカミカミする。でも、俺はそんな姿が好きなんだけどね。」

と磯沼さん。旅も終盤で少しリラックスした様子で、笑顔を浮かべていました。

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今回の旅を終え、ある気付きを得ました。

それは、「牛らしい姿と、それを支える人の想い」です。

磯沼ファームの牛たちを見ていると少しクスっと笑える場面があったり、そんな姿を普段見ることがない僕にとってはすごく新鮮でした。

当然牛と会話できませんが、放牧場で嬉しそうに駆け回る姿を見て、その幸せがひしひしと伝わってきました。
そして、その環境を整える磯沼さんの想いも強く感じました。

僕はありがとんプロジェクトを通じて、いろんな人が「生き物を食べている」という実感を持つようになってほしいと思っています。

そのためには、そのお肉がどういった背景で育ったのかを知った上で、食べてほしい。

今回触れ合った牛のように、〇〇らしい姿を伝えることで、そうした実感を持ってもらえたら幸いです。

拙い文章でしたが、ご精読ありがとうございました!