【牛の放牧合宿・対談SP・第二弾】 「いすみに、移住(いすみ)しませんか?」

千葉県房総半島の南東部に位置するいすみ市。周辺3町が合併し、誕生してから14年が経とうとしています。

 

そんないすみ市は、移住者が多いことで有名な市。

今回は、いすみ市への「移住・定住」の支援活動をされている「NPO法人いすみライフスタイル研究所」(以下いラ研)の皆さんにお話を伺いました。

 

「このままの働き方・暮らし方でいいのかな、という疑問が移住のきっかけだった」

 

移住を考えている方・移住した方の支援をしている、いラ研の皆さん。現在理事長を務める高原和江さん、副理事長の奥村雄司さん、そして前理事長で現顧問の君塚正芳さんはいすみ市の出身で一度東京で暮らした経験を持ついわゆる「Uターン」組。理事の江崎さんは、熊本県の出身で東京で暮らしていすみへ移住した「Jターン」組です。

 

高原さん「いすみで育ちましたが東京の大学に進学、そのまま東京に就職し働いていました。ですが30歳を目前として、本当にこのまま東京で働き続けていていいのかな、と思ったんです。」

 

奥村さん

「いすみで生まれましたが、東京で働いていました。兄の就職が決まり、いすみ市の実家の家業を継ぐかどうか迷ったんですよ。そのときに、小学校時代の恩師の言葉を思い出して。『分岐点では、自分にとってより難しい選択肢を選びなさい』と言われていたんです。」

 

君塚さん

「出身はいすみだけど東京の大学に入学して、東京の銀行に就職しました。でも2、3年経ったときに異動や結婚の転機も重なり、東京に残り銀行員を続けるか、いすみに帰り家業を継ぐか考えるようになったんです。子供を育てる環境を考えたときに、自然豊かな地元に帰ることを決めました。」

 

今回の対談の中で唯一の移住者なのは、現在理事を勤める江崎亮さんです。

 

江崎さん

「バブル期に、東京での暮らしに違和感を覚えていた中で、知り合いが暮らしている九十九里浜や太平洋の雄大さと美しさに触れたことが、移住のきっかけでした。」

 

「いすみの暮らしには、気持ちのゆとりがある」

 

それぞれの転機で、いすみ市に来た皆さん。

実際に東京での暮らしを体験したあとにいすみ市で暮らし始めると、都心での暮らしとの違いをひしひしと感じたそう。

 

高原さん

「田舎の決められたような暮らしは絶対に嫌だと思っていました。でも都心で暮らす中で、生まれ育ったふるさとの広い空や豊かな自然の魅力にあらためて気づきました。いすみでは、月がきれいだとか、朝、鳥のさえずりが聞こえるなど、人間らしい暮らしができるようになったなと思います。」

 

自然の中の、人間らしい暮らし。そんな都心にはない暮らし方を、お子さんのためにも選んだのが、君塚さんです。

 

君塚さん

「やっぱり子どもは、自然の中で育てたいと思いました。いすみでの暮らしには、都心にはない時間や気持ちのゆとりがある。」

 

自然だけでなく、人とのつながりの違いも大きい、といいます。

 

奥村さん

「ここでは、戸締りしないんですよ。一番いい防犯は、戸締りなんかよりご近所づきあい。家を離れるときには、お隣さんにちょっと家を気にしていて、って声を掛ければいいんです。」

 

江崎さん

「いすみの様な人との繋がりが多い町で暮らしていたから、3.11のときもあまり不安にならなかったですね。困ったことが起きたときは誰に頼ればいいかが分かっていて、生活に必要なものが自分の知り合いでなんとかできる自信があったのは良かった。」

 

「ここなら大丈夫かな、と思って移住してくれたら」

 

東京での生活を経ていすみに戻ってきた、いラ研の皆さん。

移住の相談に来る人に対して、どの様な移住支援をしているのでしょうか。

 

奥村さん

「移住を考え始めたころは、みんな『農業をしたら、古民家に暮らしたら、どんなに楽しいだろう』と妄想を膨らませて相談に来る。その要望に答えてファミリーをターゲットにした農業体験ツアーを開催したり、古民家を紹介したりしています。」

 

江崎さん

「一方で、実際の暮らしで困ることなど、マイナスの点もきちんと伝える様にしています。例えば古民家なら、実際は空きが少なくて入れるか分からないことや、雨漏りがしやすいことなどもきちんと伝えています。」

 

君塚さん

「NPOであるいラ研は、圧倒的に移住者目線です。『あなたはいすみ市向きではないかも』や『今は移住するタイミングではないのでは?』と伝えることもある。必要があれば、違う場所を紹介したりもする。

 

大切なのは、繋がりを持ち続けてもらうこと。長期的な繋がりを考えて、良いところだけを伝えるのではなく、その人のことを考えたアドバイスを大切にしているんです。」

 

良いところだけを知って、夢を見ているような状態で移住してきたら、暮らしはじめてからのギャップが生まれてしまう。いすみ市にとっても、移住してくる人にとっても望ましくないギャップは埋めておきたい、と言います。

 

奥村さん

「いすみ市が有名なのは、移住しに来た人が自発的に発信してくれるからなんです。SNSやチラシなど街の魅力を発信してくれる人が多い。」

 

相談者のことを考えることが、結果的にいすみ市の魅力発信にも繋がっているんですね。

 

 

また「移住支援」というと移住前のイメージがありますが、移住後の支援がとても重要なのだそう。

 

江崎さん

「私達は、移住後の人達に対しては何でも屋さんになる。(笑)一緒に暮らす人が増えるのだから、楽しい暮らしができればいいな、という思いがあります。

 

引っ越して住み始めると色々な問題が起きるもので、そういうときに手伝ってくれる人がいることの安心感はかなり大きいと思います。

 

ハチの巣の駆除とか、車買う場所とか、印刷屋さんとか。なんでもサポートできればなあと。」

 

 

「みんなが笑顔で、住みやすいいすみ市であってほしい」

 

いすみ市には、お互いがお互いを頼って暮らす、素敵な繋がりがありました。

最後に、いすみ市の魅力を発信し続ける、いすみライフスタイル研究所の皆さんのこれからの想いをお聞きしました。

 

高原さん

「みんなが笑顔で住みやすい、いすみ市であってほしいですね。なにか問題が起きたとしても、皆で解決していければいい。地元の子どもたちには、1度いすみ市を出て外からいすみを見て、また戻って来てくれたらいいと思います。」

 

江崎さん

「元々は東京に憧れていたけど、住んでみると『こんなもんか』と思った。ここは自然豊かで、人間的な暮らしができるのが魅力ですね。」

 

皆さん、「いすみ市に暮らせて良かったと思ってもらえれば。」と口を揃えられていたのが印象的でした。